1970年代から現在に至るまで、影響を受けていないミュージシャンは皆無と言っていいほどの音楽シーンの伝説。
1947年1月8日、イギリス、ロンドン生まれ。本名デヴィッド・ロバート・ジョーンズ。子どもの頃から音楽に親しみ、15歳で初めてのバンドを結成。1964年、17歳時に初めてのレコードをリリースする。’67年には、デヴィッド・ボウイ名義の初のアルバムを発表。’69年、シングル「スペイス・オディティ」が全英チャートでトップ5入りを果たし、注目を集める。
‘72年にはアルバム『ジギー・スターダスト』を発表。濃いメイクや中性風のファッションにより、グラムロックのイメージを決定づけ、一躍メインストリームに躍り出た。’75年には再リリースされた「スペイス・オディディ」によって初の全英ナンバーワンを獲得する。1970年代は彼にとって、もっともクリエイティブな時代であり、毎回のようにスタイルを変えては批評家やファンの賞賛を浴び続けた。中でも、’77年の『ロウ』『英雄夢語り(ヒーローズ)』、翌年の『ロジャー(間借人)』は“ベルリン三部作”と呼ばれ、シンセサイザーを導入したアーティスティックな作品として高い評価を得ている。また、この頃から俳優としての活動も本格化し、ニコラス・ローグ監督の『地球に落ちてきた男』(76)では主演を務めた。
1983年に発表した『レッツ・ダンス』は全英でトップに立ったのみならず、世界的な大ヒットに。日本でも、大島渚監督の映画『戦場のメリークリスマス』への出演と相まって知名度を高めた。1989年にはバンド、ティン・マシーンを結成して活動。解散後もコンスタントに新作を発表していたが、2004年に病に倒れて長い休養を余儀なくされる。’13年に10年ぶりの新作『ザ・ネクスト・デイ』を発表してファンを喜ばせた。’16年1月10日、肺癌により69歳で逝去。2日前の誕生日にアルバム『★(ブラックスター)』をリリースしたばかりだった。
ドキュメンタリーの分野で活動する映像作家。1968年、米ロサンゼルス生まれ。’99年に『On The Ropes』(原題)でアカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされ、注目を集めた。『ゴッドファーザー』などで知られる映画プロデューサー、ロバート・エヴァンスにスポットを当てた『くたばれ!ハリウッド』(02)も好評を博す。ザ・ローリング・ストーンズを扱った『クロスファイアー・ハリケーン』(12)では、『ムーンエイジ・デイドリーム』と同様に膨大なアーカイブから貴重な映像を選り抜き、彼らの1960~70年代の激動の歩みを時代背景とともに浮かび上がらせた。同じく音楽ドキュメンタリー『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』では90年代のカリスマとなったニルヴァーナの故カート・コバーンをクローズアップ。2017年のTV作品『ジェーン』ではエミー賞の監督賞を受賞している。
デヴィッド・ボウイの多くのアルバムにプロデューサーとして関わって来た、彼の盟友というべき存在。1944年、米ニューヨーク生まれ。アメリカでソングライター兼ギタリストとして活動した後、渡英。’68年頃からロンドンを拠点にして音楽プロデュース業を開始する。ボウイはもちろん、ティラノザウルス・レックス~T.レックスとの仕事によって知られるようになり、1970年代前半のグラムロックの人気を支えた。ボウイのアルバムでは69年の『スペース・オディティ』から遺作『★(ブラックスター)』までの間の13枚の製作に携わっている。その他、スパークス、シン・リジィ、プームタウン・ラッツ、ムーディー・ブルース、モリッシーなどのアルバムでプロデュースを手がけてきた。2015年には自身のバンドを率いて来日公演を行ない、デヴィッド・ボウイのアルバム『世界を売った男』を再現して話題となった。
音響や音響編集の分野で活躍するベテランのエンジニア。アカデミー賞では『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(94)以来、10度ノミネートされており、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)では受賞を果たした。また英国アカデミー賞では9度のノミネート歴があり、同作の他に『あの頃ペニー・レインと』(00)、『マスター・アンド・コマンダー』(03)、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)で栄冠に輝いた。他の作品には『エアフォース・ワン』(97)、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』などがある。
1980年代に映画業界に入り、これまで100本以上の作品に関わってきたエンジニア。『3時10分、決断のとき』(07)、『マネーボール』(12)、『フォードvsフェラーリ』(19)でアカデミー賞の音響賞にノミネートされた。その他の主な作品は『恋はデジャ・ブ』(93)、『恋愛小説家』(97)、『ライフ・アクアティック』(04)、『ナイト・ミュージアム』(06)、『スター・トレック』(09)、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』(09)、『アメイジング・スパイダーマン』(12)、『インフェルノ』(16)、『最後の決闘裁判』(21)。
2000年より映画業界で活躍を続けてきたイギリス出身の音響編集者。『ボヘミアン・ラプソディ』(18)でニーナ・ハートストーンとともにアカデミー音響編集賞を受賞した。『レ・ミセラブル』(12)では音響・音楽チームの一員として英国アカデミー賞の最優秀音響賞を獲得。他の主な作品は『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(02)、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(03)、『スウィーニートッド フリート街の悪魔の理髪師』(07)、『スリー・ビルボード』(17)、『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY(2022)』。
名門パインウッド・スタジオの編集室研修生としてキャリアをスタートさせ、映画界で30年近く活躍してきた音響編集者。ジョン・ワーハーストとの共同作業が多く、近年ではアカデミー音響編集賞を受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』(18)や『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(22)などで組んだ。その他の作品は『エビータ』(96)、『17歳の肖像』(09)、『ゼロ・グラビティ』(13)、『名探偵ピカチュウ』(19)、など。業界内のパネルや映画祭に参加し、後進の育成にも積極的に取り組んでいる。
※順不同・敬称略。
思春期からデヴィッド・ボウイに目覚め、これまで様々な音源や映像、インタビュー、書籍などを通じて出来上がった、自称「ボウイの痛いファン」の僕が上映わずか3分で大号泣してしまった作品です。
歌詞の訳詞も言葉の訳も愛ある編集とサウンドと共に「なんなの?」というぐらい心に突き刺さり、涙でびしょ濡れになったマスクに窒息しそうになって観ていました。
上映中、毎日映画館に通ってボウイの匂いを感じてたいし、この作品が発売されたら家にホームシアターを作って煮詰まる度にこの映画を観ていたい。
誰も観たことのないボウイが居る。ロックアイコンとしての華々しいサクセスストーリーの裏で、ひとときもアートに対する情熱を手放さなかった彼の執念が、苦悩と共に美しく描かれている。ボウイ・ファン必見の名作。
これは故“デヴィッド・ジョーンズ”の記録映画ではない。証言やインタビューも、年譜や解説もない。家族や生い立ちも彼の“死”さえも語られない。“世界を売った男”、 “スターマン”、“ジギー・スターダスト”、“地球に落ちてきた男”、時代と共に変遷する体現者“デヴィッド・ボウイ”の生き方を体感するインスタレーション映画だ!ボウイと生きた世代も、そうでない若い世代も、この至極の冒険譚“スペイス・オディティ”に搭乗すべきだ。ここにはいまも、“生きた”ボウイがいる。
生涯貫いたクリエイティブと彼が発したメッセージを改めて堪能できる、マニアにもビギナーにも刺さる作品。秀逸なコラージュとレア映像も必見だと思います。
音楽で哲学をアートする強靭な才能の持ち主、デヴィッド・ボウイ。彼の飽くなき挑戦と冒険から、他からは得られない類稀なエネルギーを感じました。混沌とした世界の中で、時代に向き合いながら凛として格好良く居続けることは困難ですが、デヴィッド・ボウイはそれをやり遂げた人です。命は輝くものなんだと、改めて教えられた気持ちです。素晴らしい映画です。皆さん是非ご覧になってください。
長きに渡って僕のカメラに向かい合ってくれたボウイ。英語のしゃべれない僕に『ハーイ、スキータ!』と声をかけてくれて40数年、時を超え再び映画館の大きなスクリーンで再会できた。デヴィッド・ボウイは永遠なり。
今見ても新しく、唯一無二の魅力的な世界!
ボウイが見ていた世界を、ものづくりを、映画を通じて体験できる貴重な一作。ジャンルにとらわれずクリエィティブを追求し続けるボウイの姿に、私もアツくなりました!
ある美しい男の膨大なマテリアルから生成された人生の走馬灯。彼が踏んだ土地とその先々でのハイライト。ボウイの記憶を追体験することは、自らの歩みをふりかえる体験でもありました。
あらゆる表現創作活動の行き着く先はドキュメントであると思う。この「MOONAGE DAYDREAM」はDavid Bowieという稀に見る表現者の苦悩や夢、挑戦と失敗、差別と栄光の月光の様にシリアスで重厚な稀に見るドキュメント作品となっている。
David Bowieを語る時、時代という言葉は使いたく無い。彼はその時代という不確実なグリッドに関わる時間という線の概念を全て液体状に変化させてしまい、売り払ってしまった世界の全てをその流れの渦の中に巻き込んでしまったのだ。
この作品の中でも"時"はとても重要な付箋となっているが、Bowieによって変えられた液体時間の中で溺れ、流れ着いた先ですべての現実がDAYDREAM「白昼夢」であった事に気付かされる。
しかしこんな夢ならばどうか目覚めずにいてほしい。Bowieが虹のかけ橋の袂で待っていてくれる。
所謂ドキュメンタリーとは異なる作品だ。ボウイ自身による肉声で、彼自身の哲学、拘り、表現への愛情が語られる。まるでこの映画も、彼の偉大な作品のうちの一つのように感じられた。
舞踏家、俳優、哲学者、思想家、ファッション、アート、観念的な世界をロックで演じる表現者の21世紀ニュードキュメンタリー映画。観たこともないシーンに興奮。いや説明はいらなかった。彼はデヴィッド・ボウイなんだから。魂が感じるままに観ればいいんだよ。
ボウイは彼自身の変化と冒険に満ちた人生のすべてを最初から知っていたのかも……。まるで火星から地球を眺めるように客観的に。丁寧に映像に残された美しい姿と音をスクリーンで浴び終えた瞬間、僕はそう思った。
あの日から、ボウイがいない宇宙に生きている不幸をずっと嘆いていたけれど、今は、ボウイの美学が息づく宇宙に生きている幸福を噛みしめている。
ドキュメンタリーを超えた、魂と創造のライフロードムービー。
これは21世紀のオデッセイア。映像とサウンドと共にボウイの魂が全ての謎を解き明かすように語り始め、大きく孤高な魂が僕らを包み込んでくれる。「君はひとりじゃない!」
なんというスペクタクル!これはデヴィッド・ボウイの人生に対する愛が炸裂するボウイの脳内旅行。国境、人種、宗教、セクシャリティ、文化の壁を越える彼の圧倒的カリスマ性を祝う映画史に残る傑作です。
僕はコレクターだと言っている。 確かに美のポイントを的確に吸収し身体へとエネルギー源を集中させ群衆の場へと放出させている。
BOWIEがBOWIEをクリエイトしているのだ。凄いアーティスト。
ボウイが歌う、ボウイが奏でる、ボウイが踊る、ボウイが語る。膨大なアーカイヴから選りすぐられた劇的な瞬間の数々に息を呑みます。改めて、こんなアーティストは他にいない。